WEB3.0とは?

WEB3.0

WEB3.0とは?

インターネットの歴史はわずか数十年で激変を遂げました。初期の「ただ情報を見るだけの時代」から、ユーザーが積極的に参加するSNS時代を経て、今注目されているのが「Web3.0(ウェブスリー)」です。この新しいWebの形は、ただの技術革新にとどまらず、私たちの情報との付き合い方、価値の捉え方、そして経済活動そのものを根底から変えようとしています。

1) インターネットの進化:Web1.0 → Web2.0 → Web3.0

まずは、Webの進化を簡単に振り返りましょう。

1-2 Web1.0:読むだけの時代(1990年代〜2000年代初頭)

Web1.0は「静的なWebサイトの時代」とも言われます。企業や団体がホームページを開設し、情報を一方的に発信。ユーザーはその情報を「読むだけ」の立場でした。

1-3 Web2.0:参加型のインターネット(2000年代中盤〜)

ブログ、SNS(Twitter、Facebook、YouTubeなど)の登場により、誰もが情報発信者になれる時代へ突入。ユーザー同士がつながり、いいね!やコメント、シェアなど双方向のやり取りが可能になりました。ただし、GAFAなど特定の巨大企業が情報や広告収益を独占する構造が問題視されるようになります。

1-3 Web3.0:分散型インターネット(2020年代〜)

Web3.0の最大の特徴は「分散化(Decentralization)」です。ブロックチェーン技術により、データやサービスを特定の企業に依存せず、ユーザー自身が所有・管理できる世界が描かれています。

2) Web3.0の主要な特徴

2-1 データの所有権が「個人」に戻る
現在、あなたがSNSに投稿した写真、位置情報、購入履歴などは、そのプラットフォーム(Facebook、Instagram等)が保有しています。Web3.0では、自分のデータは自分で所有し、提供するかどうかも自分で選べます。データを提供する代わりに報酬を得る「データエコノミー」の実現が期待されています。

2-2 中央管理者が不要になる
銀行や政府といった「信用の管理者」がいなくても、スマートコントラクト(自動契約)により、信頼性のある取引が可能になります。たとえば、ブロックチェーン上で「ある条件を満たしたら自動で支払いが実行される」ような契約が、仲介者なしで行えます。

2-3 トークンエコノミーの誕生
Web3.0では、様々なサービスやコミュニティが独自のトークン(仮想通貨)を発行しています。ユーザーはこのトークンを使って参加・投票・報酬などの活動ができ、経済圏が形成されていきます。

3) 欧米の最新ニュースと事例【詳細版】

3-1 米国:BlackRockとFranklin Templetonによる「実物資産×ブロックチェーン」の最前線

世界最大の資産運用会社BlackRockは、米国で不動産や債券などの実物資産をブロックチェーン上にトークン化するプロジェクトに着手。DeFiと伝統金融の融合が進んでいます。

Franklin Templetonも同様に、米ドル建て債券ファンドをPolygonネットワークでトークン化し、DeFiとの接続を進めています。これにより、従来の「投資信託」や「ETF」といった仕組みが、ブロックチェーン上で再設計される動きが活発化しています。

3-2 欧州:分散型ID(DID)実証実験が本格始動

EUでは、個人が自分の身元情報を管理・提示できる「分散型ID」の導入に向けた法整備が進行中。EstoniaやGermanyでは、すでに行政や医療での実証が行われています。

DIDは「身分証明をブロックチェーン上に記録し、ユーザーがコントロールできるID」のことで、Web3.0におけるログインや契約認証の基盤になると期待されています。

3-3 Web3.0×AI:次世代型エージェントとデータの信頼性確保

Web3.0においてAI(人工知能)との統合も急速に進んでいます。なかでも注目されているのは:

Fetch.aiはイギリス発のプロジェクトで、AIエージェントがブロックチェーン上で「交渉・契約・取引」を自動で行うというコンセプトを掲げています。

Ocean Protocolは、AIトレーニングに不可欠な「データの信頼性」と「出所の証明」に焦点を当てたプロジェクトです。ユーザーが自分の医療・行動・購買データを匿名でアップロードし、それがAI企業に活用される際には報酬(トークン)を受け取る仕組みになっています。

4) まとめ

Web3.0は単なる「ブロックチェーン」や「仮想通貨」にとどまらず、法制度、アイデンティティ、AI、実物経済との接続までを含めた広範な変革として進行しています。情報と権利の分配構造を変える新しいインターネットとして、今後の展開から目が離せません。

4-1 Web3.0の実用事例:教育・医療・環境分野への応用

Web3.0の技術は、金融やIT業界にとどまらず、社会インフラや公共サービスにも応用され始めています。

4-1-1 教育分野
ブロックチェーンを使えば、学位や資格の証明書を不正に改ざんされない形で記録・共有できます。これにより、国をまたいだ就職や留学時に、学歴の検証がスムーズになります。アメリカではMIT(マサチューセッツ工科大学)がブロックチェーン証明書を発行する試みを実施しています。

4-1-2 医療分野
分散型IDと組み合わせることで、患者自身が自分の医療情報を安全に管理し、必要に応じて医師に開示できます。これにより診療の精度が上がるだけでなく、医療データの誤用や漏洩のリスクも軽減されます。

4-1-3 環境・エネルギー分野
再生可能エネルギーの「発電→消費」までの過程をブロックチェーンで可視化し、個人や企業がカーボンオフセット取引に参加できるプラットフォームも登場しています。欧州ではPower Ledger(オーストラリア)などが主導しています。

4-2 なぜ欧米が先行しているのか?日本との比較

欧米と比較すると、日本ではWeb3.0関連技術の商用化や社会実装がやや遅れていると言われます。その理由のひとつは、規制の明確性です。米国やEUでは「枠組みをつくりつつ柔軟に試させる」政策が取られています。

日本も2023年には経済産業省が「Web3.0政策推進室」を設置し、NFTやDAOを含む制度設計に取り組み始めていますが、税制面や法律の整備では欧米に遅れをとっています。反面、ゲーム・アニメ・文化とWeb3.0の融合に関しては日本のIP(知的財産)が強みとなり、グローバル展開の可能性が期待されています。

4-3 投資家・ビジネスパーソンにとっての展望

Web3.0は技術だけではなく、既存のビジネスモデルや雇用形態も変えつつあります。たとえば、分散型自律組織(DAO)に参加することで、国境や組織に縛られずに報酬を得る働き方も出てきました。

将来的には、従来の「企業に所属する働き方」から、「トークンエコノミーの中で自らのスキルを価値化する働き方」へのシフトが進む可能性があります。Web3.0の概念を理解することは、もはやIT業界だけでなく、全てのビジネスパーソンにとって必要不可欠な教養となりつつあるのです。

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